調停離婚が成立したら、離婚届はどうする?その後の手続も解説

調停離婚が成立したら、離婚届はどのように提出するのでしょうか?
また、離婚に伴ってどのような手続が必要なのでしょうか?

実は、調停離婚の場合、協議離婚(※)の場合とは離婚届の提出方法などについて異なる部分があります。
※裁判所を介在させず、当事者の話合いによってする離婚のこと

なお、調停離婚の場合、離婚届は調停成立から10日以内に提出しなければなりません。

このコラムでは、調停離婚やその後の手続などについて弁護士が解説します。
調停離婚を検討されている方や離婚調停中の方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

調停離婚とは?

「調停離婚」とは、家庭裁判所に離婚調停を申し立てて、裁判所での話合いにより離婚する方法です。

当事者同士では話合いがまとまらず、離婚できない場合には、離婚調停を申し立てるのが通常です。

話合いといっても、当事者だけで直接話し合うわけではありません。
家庭裁判所が選任した調停委員2名(男女1名ずつが多い)が夫婦の間に入り、双方の意見を聞きながら、離婚すること、各離婚条件について調整を進め、最終的に合意することを目指します。

なお、2021年の日本の離婚総数は18万4,384件で、うち1万6,975件が調停離婚で離婚しており、日本の離婚のうち、約9.2%が調停離婚であることがわかります。

参考:離婚の種類別にみた年次別離婚件数及び百分率|e-Stat 政府統計の総合窓口

調停離婚は、夫婦双方が離婚することに合意し、家庭裁判所が調停調書を作成することで離婚が成立します。
もし、調停の場でも離婚について合意できなければ、離婚は成立しません。

調停離婚が成立したあとの流れ

調停調書が作成されたあとは、およそ次のような流れで離婚届を提出します。

  1. 調停調書の謄本を請求する
  2. 調停調書の謄本と一緒に離婚届を提出する

(1)調停調書の謄本を請求する

調停調書謄本を請求して交付してもらいます。
調停証書謄本の申請方法には、郵送で申請する方法(郵送申請)と、裁判所に足を運んで申請する方法(来庁申請)があります。

調停が成立したら、その足で裁判所の書記官室に行って謄本申請するのが一般的です。

こうしておけば、わざわざ裁判所に行ったり、ホームページから調停調書謄本の交付申請書等をダウンロードして郵送したりする必要はありません。

(2)調停調書の謄本と一緒に離婚届を提出する

調停調書謄本と離婚届を役所に提出します。 提出先は、夫婦の本籍地または所在地の市区町村役場ですが、本籍地以外の役場に提出する場合、戸籍謄本の提出も必要です。

離婚届は、離婚調停が成立してから10日以内に提出しなければならず、10日を過ぎると、5万円以下の過料を科される可能性があります。

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調停離婚の場合の離婚届の扱い

調停離婚の場合、次のような点で、協議離婚の場合とは離婚届についての扱いが異なります。

1. 離婚届に証人の署名は不要
2. 離婚届に夫婦双方の署名は不要

(1)離婚届に証人の署名は不要

協議離婚の場合、離婚届には成年の証人2人の署名が必要です。
しかし、調停離婚の場合、証人の署名は不要です。

引用:離婚届|法務省

(2)離婚届に夫婦双方の署名は不要

協議離婚の場合、離婚届には夫婦双方の署名が必要です。
しかし、調停離婚の場合、離婚届を提出する側の署名で足り、もう一方の署名は必要ありません。

調停離婚が成立したあとの手続

離婚の際には、離婚届の提出だけでなく、ほかにも次のような手続が必要です。

1. 戸籍に関する手続
2. 公的医療保険・年金に関する手続
3. ひとり親家庭への生活支援に関する手続

(1)戸籍に関する手続

戸籍に関する手続としては、氏に関する手続と子に関する手続があります。

(1-1)氏に関する手続

通常、婚姻時に相手方の氏に変えた側は、離婚に伴い、婚姻前の氏に戻ることになります。
もっとも、離婚の日から3ヵ月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」と戸籍謄本を役場に提出すれば、離婚後も婚姻中の氏を使い続けることができます。

(1-2)子どもの戸籍に関する手続

離婚の際に子どもがいる場合、子どもはもといた戸籍から動くことはありません。
離婚によって戸籍を抜けた親の戸籍に子どもを入れたい場合には、「入籍届」と親子の戸籍謄本(子どもと入籍する親の戸籍謄本)を役所に提出する必要があります。
しかし、離婚によって戸籍を抜けた親の戸籍に子どもを入れるためには、その親と子どもの氏を同じくする必要がありますので(これは、母(又は父)が離婚後も婚姻中の氏を称している場合であっても同じです。)、入籍届をする前に、子の氏の変更をしなければなりません。

子の氏を変更する場合には、「子の氏の変更許可の申立書」と親子の戸籍謄本(子どもと父母の戸籍謄本)を家庭裁判所に提出する必要があります。

(2)公的医療保険・年金に関する手続

離婚の際には、公的医療保険・年金に関する手続も必要です。

(2-1)公的医療保険に関する手続

専業主婦の場合、婚姻中は夫の健康保険や、夫を世帯主とする国民健康保険に加入していることが多いでしょう。
その場合、離婚後は、夫の保険の被保険者資格を喪失することになります。
そのため、その保険から脱退し、新たな保険への加入手続をすることが必要です。

婚姻中、ご自身がどのような保険に加入していたか、離婚後どのような保険に加入するかによって、その後の脱退・加入手続が異なるため、それぞれの場合ごとに説明します。

国民健康保険→健康保険
夫を世帯主とする国民健康保険に加入していた場合で、新たに健康保険へ加入する場合(離婚後すぐに就職する方)は、勤務先を通じて手続します。

健康保険→新たな健康保険
夫の扶養家族として健康保険に加入していた場合で、新たに健康保険に加入する場合(離婚後すぐ就職する方)も、勤務先を通じて健康保険加入の手続をします。

国民健康保険→新たな国民健康保険
夫を世帯主とする国民健康保険に加入していた場合で、新たに国民健康保険に加入する場合(離婚後すぐに就職しない方)は、市区町村役場に転入届・転出届を提出すれば、新たな国民健康保険に加入できます。その場合、役所で自身を世帯主とする国民健康保険の加入手続をします。

健康保険→国民健康保険
夫の扶養家族として健康保険に加入していた場合で、新たに国民健康保険に加入する場合(離婚後すぐに就職しない方)は、まず、夫から会社を通じて、健康保険の被保険者ではなくなったことを証明する資格喪失証明書を取得してもらいます。次に、役所で自身を世帯主とする国民健康保険加入手続をします。この際に、上記の資格喪失証明書が必要となります。

新たに自身が加入する保険に子どもを一緒に加入させる場合には、子どもについても新保険への加入手続が必要です。
子どもを国民健康保険に加入させるのであれば役所で、健康保険に加入させるのであれば勤務先で手続しましょう。
なお、従前の保険が健康保険であった場合、新たに国民健康保険へ加入させるためには、自身の場合と同じく子どもの資格喪失証明書が必要です。

詳しくは「健康保険や医療保険など」をご覧ください。

(2-2)年金に関する手続

専業主婦であれば、婚姻中は夫の厚生年金に加入している場合もあるでしょう。
その場合、離婚後は夫の厚生年金の加入資格を喪失するため、国民年金(自営業、学生、無職など)に変更することがあります。

国民年金に変更する際には、市町村役場で国民年金の加入手続をする必要があり、厚生年金喪失証明書、年金手帳や本人確認書類などの提出、および氏の変更手続をしなければなりません。

(2-3)年金分割

離婚に伴い年金分割をする場合、年金分割を受ける人が手続をしなければなりません。
年金分割の手続には、請求者の現住所を管轄する日本年金機構(年金事務所)に標準報酬改定請求書を提出する必要があります。

その際には、年金手帳、離婚届、戸籍謄本、合意分割の場合は按分割合を定めた公正証書や調停調書、確定判決などを持参します。
なお、3号分割の場合は、当然に2分の1ですので、按分割合を定めた書類の提出は必要ありません。

なお、年金分割は、原則として離婚の翌日から2年以内に分割請求を行う必要があります。

詳しくは、「退職金と年金分割」をご覧ください。

(3)ひとり親家庭への生活支援に関する手続

離婚後に一人で子どもを育てていくのは、とても大変なことです。
そのため、さまざまな公的な支援が存在するので、ぜひ積極的に活用してください。
各種の要件を満たせば、次のようにさまざまな公的支援を受けることが可能です。

【経済的な支援制度】
• 児童扶養手当
• 児童手当
• 特別児童扶養手当、障害児童福祉手当
• 生活保護
• 就学援助      など

【生活に対する補助・優遇制度】
• ひとり親家庭に対する医療費補助制度
• 乳幼児医療費助成制度
• 都営交通の無料パス(東京都)
• JR通勤定期の割引
• 水道・下水道料金の減免
• 粗大ゴミの処理手数料の減免     など

詳しくは、「公的支援など」をご覧ください。

【まとめ】離婚届は調停離婚成立後10日以内に提出しなければならない

「調停離婚」とは、家庭裁判所に離婚調停を申し立てて、調停委員を介した話合いにより離婚する方法のことです。
調停成立により、離婚は成立しますが、離婚届の提出は必要なため、忘れないようにしましょう。
また、協議離婚の場合と異なり、離婚届に証人の署名や、夫婦双方の署名は不要です(提出する側の署名のみで足りる)。

離婚には、調停離婚だけでなく、ほかの方法もあります。

詳しくは「離婚の種類と手続方法」をご覧ください。

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この記事の監修弁護士
林 頼信
弁護士 林 頼信

どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。

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