離婚したら保険証はどうなるの?必要な手続をケース別に解説

作成日
2023/05/20
更新日
2023/05/20

目次

離婚したら保険証はどうなるの?必要な手続をケース別に解説
離婚をすると、それに伴ってさまざまな手続をする必要が出てきます。
そのうちの1つに、健康保険を切り替える手続というものがあります。

健康保険とは、日本の全国民が利用できる公的医療保険制度のことです。
日本では、国民全員に医療保険の加入を義務付ける「国民皆保険制度」を採用しているため、保険に加入していないと、医療費は全額自分で支払うことになります。

離婚した時の健康保険の手続は、それぞれの状況によって異なります。
そして、健康保険に自動的に加入や離脱をすることはありません。そのため、ご自身の世帯状況が変わった場合には、その旨を届け出て、健康保険の切り替え作業を行う必要が出てくることがあります。

自治体にもよりますが、もし健康保険に加入していない状態のままだと、中学生以下の子どもが病院にかかった場合の自己負担額が大きくなってしまうなど、さまざまな弊害が発生しかねません。
そこで、離婚をした場合には、健康保険の切り替えの手続についても、早急に、かつ、しっかりと済ませておきたいものです。

今回は、その手続に関して詳しく解説します。

離婚しても健康保険の手続は自動的に行われない

離婚しただけでは、健康保険に関する手続は自動では行われないので、状況に応じて自ら手続をおこなう必要があります。
離婚すると、それまでの健康保険への加入資格を失ってしまうケースも多いのが実情です。

健康保険の切り替えをせずに放置していた場合、未加入期間ができてしまい、未加入期間は病院での診療・治療費が10割(全額)負担になってしまいます。

この場合は、後日新しい健康保険に加入して、未加入期間の健康保険を支払うことで、離婚と同時に健康保険を切り替えたのと同じ状態にすることも可能です。

このように後日手続をすれば、10割で支払ったうちの7割を返してもらうこともできます。

しかし、裏を返せば、再加入までの期間に大きな病気やケガをしてしまうと、いくらあとで治療費などが返ってくるとはいっても、一時的には多額の出費が必要となってしまいます。

こうした事態はやはり避けたいところですので、離婚後すぐに健康保険の切り替えの手続を行うべきでしょう。

離婚した時の保険証の手続は状況によって異なる

まずは、自分が加入している保険の状況を確かめることが大切です。
現在(手続前)の保険の種類が、社会保険なのか、国民健康保険なのかを確認しましょう。

具体的には、現在の保険が社会保険の場合、配偶者の扶養に入っていたか、自分名義の(自分の勤め先の)保険に入っていたか、といったことになります。

現在の保険が国民健康保険の場合、誰が世帯主となっているかを確認しましょう。

離婚後は、親など配偶者以外の扶養に入るかどうかについても確認しましょう。

【状況別】離婚に伴う保険の手続

(1)配偶者の社会保険に被扶養者として入っている場合

会社の健康保険などは、そこで働く人とその家族しか入れないものです。
離婚すると、「そこで働く人の家族」ではなくなるので、加入資格を失うこととなってしまいます。

配偶者の勤務先の健康保険の扶養に入っていた場合、離婚に伴って脱退の手続をしなければなりません。

(1-1)離婚後は会社員として働く

配偶者の勤務先で扶養から外れる手続をしてもらい、扶養から外れたことを証明する「資格喪失証明書」を取得します。

資格喪失証明書を自身の勤務先の担当部署に提出し、新しい健康保険への加入手続を行うこととなります。

(1-2)離婚後は親などの扶養・世帯に入る

離婚後すぐに就職せず、実家に戻って会社勤めの親の扶養に入ったり、自営業者の親の世帯員になったりするような場合です。

この場合、配偶者の勤務先で扶養から外れる手続をしてもらい、扶養から外れたことを証明する「資格喪失証明書」を取得します。

国民健康保険には扶養制度がないので、親が自営業の場合には自分で国民健康保険に入らなければなりません。
国民健康保険に入る場合は、資格喪失証明書を市区町村役場に提出して手続を行います。これは、健康保険の資格喪失から14日以内に行うこととなっています。

親などの勤務先の健康保険に入る場合は、資格喪失証明書を親などの勤務先に提出して手続をすることになります。

(1-3)上記以外のケース

自営業者として働くケースや、会社員として働く予定はないが、親などの扶養に入る予定もなく、貯金で生活するケースなどは、自分を世帯主とした国民健康保険に入ることになります。

配偶者の勤務先で扶養から外れる手続をしてもらい、扶養から外れたことを証明する「資格喪失証明書」を取得することになります。

資格喪失証明書を持って、市区町村役場で国民健康保険への加入手続をしましょう。これは、健康保険の資格喪失から14日以内に行うこととされています。

(2)配偶者を世帯主とする国民健康保険に入っている場合

配偶者が自営業者で、配偶者を世帯主とする国民健康保険に世帯員として加入していたようなケースです。

国民健康保険には、「扶養」という概念がなく、世帯主に世帯員全員分の保険料が請求されることになります。

配偶者の国民健康保険に世帯員として入っていた場合、離婚に伴って世帯主名を変更する必要があります。

なお、通常は離婚すると、別居して住民票を移すので、自然と世帯分離することとなります。

(2-1)離婚後は会社員として働く

まず勤務先の企業を通して、勤務先の健康保険への加入手続をします。
加入できたら、市区町村役場で国民健康保険の脱退手続をすることになります。

(2-2)離婚後は親などの扶養に入る

世帯主である配偶者に「国民健康保険被保険者資格喪失届」を市区町村役場へ提出してもらうことで、世帯員から外れることになります。

親などの勤務先の健康保険に入る場合は、資格喪失証明書を親などの勤務先に提出して手続をします。

国民健康保険に入る場合は、市区町村役場で世帯変更の手続をします。
国民健康保険には扶養という仕組みがないので、親が自営業の場合には自分で国民健康保険に入るということになります。

(2-3)上記以外のケース

自営業者として働くケースや、会社員として働く予定はないが、親などの扶養に入る予定もなく、貯金で生活するケースなどは、自分を世帯主とする国民健康保険に入ることになります。

現在住んでいる市区町村から転居する場合に必要な手続は、以下の通りです。
  • 転出元の市区町村役場で国民健康保険資格喪失手続
  • 転出先の市区町村役場で国民健康保険加入手続
現在住んでいる家に住み続ける場合に必要な手続は、以下の通りです。
  • 市区町村役場で世帯変更手続(世帯主名の変更)

(3)自分名義の健康保険に入っている場合

離婚前から扶養に入らず会社員として働いており、自身の勤め先の健康保険に入っているような場合です。

元配偶者を扶養に入れている場合、扶養を外さなければいけないことになります。
この際は、会社に申告して資格喪失証明書をもらい、元配偶者へ交付します。
子どもを扶養しないなら子どもの分も必要になります。

姓が変わる場合はその旨申し出る必要があるかもしれませんので、詳しくは担当部署に問合せをしましょう。

(4)自分を世帯主とする国民健康保険に入っている場合

もともと世帯主で自営業者であるなど、自分を世帯主とする国民健康保険に入っている場合です。

現在住んでいる市区町村から転居する場合に必要な手続としては、以下のようなものがあります。
  • 転出元の市区町村役場で国民健康保険資格喪失手続
  • 転出先の市区町村役場で国民健康保険加入手続

離婚した場合、子どもの保険証はどうなる?

子どもを自分が扶養する場合、自分のときと同じ手続で子どもの健康保険手続を行うことが可能です。ここでは、離婚後に、妻が子どもを扶養するケースを想定しながら解説します。

夫の勤務先の健康保険から抜ける場合、夫の勤務先から「資格喪失証明書」を送ってもらう際に、妻は自分の分と子どもの分をあわせて取得する必要があります。

この際、夫が会社に対して必要書類を提出すると、妻や子どもが夫の扶養から外れて、夫の会社の健康保険を使うことができなくなります。
また、妻や子どもが夫の扶養から外れた場合には、当然ながら、夫を通じて、夫の会社に対して、妻と子どもの分の健康保険証を返却しなければなりません。

妻自身についてだけでなく、子どもについても、速やかに保険の切り替え手続を行っておきましょう。

離婚後の保険料が支払えない場合

離婚後は、シングルで生活しないといけなくなるわけですから、子育て等もあいまって、経済的に不安定になるケースも少なくありません。

保険料が支払えない状況に陥ったら、まずは市区町村役場の国民健康保険に関する窓口で相談してみるとよいでしょう。

国民健康保険料は、世帯構成、被保険者数、前年の所得に応じて決定されます。ただし、現在の世帯の状況により、支払いが困難な場合には、保険料を減免できる場合があります。

なお、保険料の減免の相談や手続をする場合には、保険料の決定通知書を受領後、初回納付期限までに国民健康保険課窓口に行きましょう。

国民健康保険については、分割払いや、減額、免除などの制度があります。
年金についても、免除や猶予の制度があります。

未納のままでいると、より大変な事態に陥る(市区町村役場から督促されたり財産を差し押さえられたりする)こともあるので、保険料の支払いに困ったときには市区町村役場で相談するべきでしょう。

【まとめ】離婚しても保険証は自動で切り替わらない|勤務先や役場での手続が必要

健康保険の手続は、複雑でわかりづらいものです。
しかし、離婚後すぐに切り替えなければ、多額の医療費を自己負担することになるかもしれません。

保険証は、自治体にもよりますが、適切な書類を持参してきちんとした手続をすれば、窓口で即日交付されたり、簡易書留で郵送されてきたりするケースがあります。

わからないことや不安なことがあれば、市区町村役場の窓口や勤務先の担当部署に相談をしましょう。

今回の記事では、離婚に伴う保険証の切り替え手続についてご説明しましたが、保険証の切り替え手続以外にも、離婚について次のような悩みを抱えていないでしょうか。
  • 「離婚に合意はしたけど細かい離婚条件の話合いがうまくいかない」
  • 「慰謝料や財産分与はどれくらいが適当なのかわからない」など
このようなお悩みをお持ちであれば、弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士なら、あなたの状況に応じた具体的なアドバイスをしてくれます。

離婚でお悩みの方は、離婚問題を取り扱うアディーレ法律事務所へご相談ください。

離婚に関するご相談は
アディーレへ!

弁護士法人アディーレ法律事務所のチャンネル

この記事の監修弁護士

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

林 頼信の顔写真
  • 本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。